社外取締役メッセージ
取締役(社外)本坊 吉博
- 厳しい環境下でハイブリッド経営の重要性を再認識
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中国の石油化学設備の増強が進み、日本の化学メーカーは、エチレン供給過多の状況に対応を迫られています。当社は、いち早くハイブリッド経営に踏み込み、コモディティという手堅い収益基盤を持ちながら、スペシャリティによる市場変化に対応する耐性がありました。中期経営計画の目標達成には届かない見込みですが、目指す姿には着実に近づいていると実感しています。
地球規模での地政学リスクが高まるなかで、一時的な化石燃料への回帰、ナショナリズムの強化、分断へと向かいつつあります。世の中の環境が目まぐるしく変わるなかで、サステナビリティの目指すべき姿や時間軸も変化しているように感じます。当社は一度目標を定めると、良くも悪くも愚直に進む傾向が強いように思うので、あらゆるステークホルダーを意識して目標を再設定するなど、今後は柔軟さも必要であると考えます。
すべての経営判断にリスクは伴います。そのリスクを乗り越えて、取り組む価値があるかどうかを忌憚なく議論できる取締役会でありたいと考えています。社外取締役はリスクを指摘するだけではなく、東ソーらしい取り組みに踏み込む後押しができるように、心がけていきます。
取締役(社外)日高 真理子
- 社外に対して、より効果的な情報発信を推進
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近年の急激な外部環境の変化から、中期経営計画の達成は厳しい状況となりました。そのようななかで、表面的ではなく長期的視点で、冷静に投資案件を進めていることを評価しています。一方で、中期経営計画の中間年度の実績、および最終年度見通しについて、より具体的でわかりやすい発信があるべきだと考えます。当社は、社内広報は充実していますが、社外へのアピールは控えめなところがあります。投資家の裾野が広がっていることや人材の確保を考えると、より丁寧な説明や情報発信は取り組むべき課題と考えます。
また2024年度は、指名・報酬諮問委員会で、非財務情報と連動した新たな業績連動報酬の導入が決まりました。当社は投資・研究開発や、人的資本の取り組みの効果が定量的な結果となるまでに、時間を要することが多いため、指標については何度も議論をしました。その結果、さまざまな要素がバランスよく入った形で導入できたと思います。
女性活躍に関しては、女性の総合職採用が増加し制度の整備を進めるなかで、この数年で工場のユーティリティの改善や、職場の理解が進んできていると思います。女性に限らず働きやすい職場となることは、東ソーグループにとっても必ずプラスになり、今後若手がますます活躍できる環境となることを期待しています。
取締役(社外)中野 幸正
- ビジョン2030に向けて着実な取り組みを期待
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取締役会は忌憚なく発言できる雰囲気であり、研究開発・設備改修などの専門的な内容に関する説明も丁寧に実施されています。議論のなかでは、半導体などのエレクトロニクス分野で使われる薄膜形成材料(スパッタリングターゲット)製造設備の能力増強案件について期待を寄せています。技術革新が早く競争も厳しい分野ですが、必ず成功させてほしいと思っています。
進行中の中期経営計画は、さまざまな要因もあり、営業利益目標の達成は困難な状況です。しかしながら、ビジョン2030の目標であるスペシャリティ事業での営業利益1,000億円達成に向かって、研究開発や設備能力増強は着実に進めていますので、自信を持ち次期中期経営計画に向かってチャレンジを続けてほしいと思います。また、サステナビリティに関する取り組みでは、カーボンニュートラルの挑戦に向けてバイオマス発電設備やCO₂回収および原料化設備の導入を進めています。人的資本の活用についても、社内公募制の導入やフェロー制度の新設などの施策を実行しており、前向きに進んでいると評価しています。
研究開発施設の更新や本社移転など、職場環境が確実に良くなっているなかで、長期的な目線で全社一丸となりビジョン2030に向けて尽力していくことを期待しています。
取締役(社外)橋寺 由紀子
- サステナビリティの観点で、新しい価値創造を目指す
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私は製薬会社で研究職として医薬品開発に携わったあと、事業部のスピンアウトに伴い30代で経営者へとキャリアチェンジし、2018年には、社会課題解決事業を支援するソーシャルインキュベータを運営する株式会社フェニクシーを創業しました。その経験を活かし、中長期的に事業環境の変化を捉え、持続的な成長に向けたガバナンスの構築に貢献していきたいと考えています。
当社との出会いは大学の研究室にあった検査機器のカタログです。そこから最先端の分析手法の知識を身に付けたことを覚えています。就任してみると、社会に不可欠で多様な化学製品をさまざまなグレードで製造していることに驚きました。また、製造工程で発生する副生成物を活用し、高付加価値製品を生み出す循環サイクルを意識した事業を構築している点は、非常に素晴らしいと思います。
企業に求められるサステナビリティは、「経済的価値」「社会的インパクト」「環境への貢献」の3つの価値を持続的に生み出すことだと理解しています。さらに、グローバルで生き残るために、新たな価値を創造し続けることが求められています。両方を解決するビジョンを従業員と共有し、実行したうえで、その成果を適切に評価していくことが必要だと考えます。当社への理解を深め、自身のキャリアで経験したイノベーションの創造、人材の相互育成の知見を共有し、新たな価値創造につなげることを目指します。