PROJECT
研究部門トップメッセージ
土井 亨
取締役 上席執行役員
研究企画部長
東ソーの強みは挑戦を支える風土と
力を合わせて問題を解決する文化。
主体的に未来を描き、
積極的にチャレンジしてほしい。
CHAPTER 01
化学業界を取り巻く状況
サステナブル社会の実現、
環境負荷低減が大きな課題。
東ソーは総合化学メーカーとしてあらゆる産業界に不可欠な素材・商品を提供することで、産業の発展や人々の暮らしに貢献しています。技術革新には、その基盤を支える素材の進化が欠かせません。とりわけ最近は環境・エネルギー、自動車、通信、ライフサイエンスなど、あらゆる分野で大きな変革が進んでおり、化学業界が果たすべき役割はますます大きくなりました。
なかでも環境・エネルギー分野は、サステナブル社会を実現するための世界的な課題です。当社はこれまで自動車の排ガス規制、NOx規制が強まるなか、世界中で利用されている環境触媒「ハイシリカゼオライト」や、工場排水やゴミ焼却灰に含まれる有害な重金属を処理する「重金属処理剤」など、先進的な環境適応型製品を数多く提供してきました。また自動車や住宅のVOC(揮発性有機化合物)対策に有効な「アルデヒド捕捉剤」や固体電解コンデンサの高容量化が期待される「自己ドープ型導電性高分子」など、数多くの先端的な製品を世に送り出しています。さらに気象変動の主要因と考えられているCO2の排出量削減や廃プラスチック問題も解決すべき重大な問題と捉えており、CO2の分離回収とその有効利用に関する研究や、廃プラスチックのリサイクルについても積極的に取り組んでいます。このように東ソーは、『化学の革新を通して、幸せを実現し、社会に貢献する』という企業理念を実現していきます。
CHAPTER 02
東ソーの研究開発体制
7つの研究所を拠点に、
外部研究機関との連携も強化。
東ソーは、中長期戦略として研究開発に力を入れています。その中枢を担うのが技術分野、機能別に編成した7研究所です。主として高分子材料研究所、ウレタン研究所、無機材料研究所、有機材料研究所の4研究所が事業系研究を担い、アドバンストマテリアル研究所、ライフサイエンス研究所、ファンクショナルポリマー研究所の3研究所が先端分野における次世代のシーズを育てるコーポレート研究に取り組んでいます。それぞれの研究所はコア技術を持ち、個々の研究開発を推進するとともに、電池材料やライフサイエンス分野で研究所横断プロジェクトを設置するなど、近年は研究所間の連携、研究者同士のコミュニケーションアップに力を入れています。
近年は外部連携による外部技術の獲得にも力を入れており、シリコンバレーに技術情報の収集やベンチャー調査のための拠点を設置。また山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンターと、有機半導体材料を基板上で薄膜にして素子を作製するプリンテッドエレクトロニクスの共同研究を進めるなど、大学や研究機関、世界のパートナー企業と数多くの共同研究を進めています。また、国家プロジェクトへも積極的参加を行っており、最近では、環境関連テーマで複数のプロジェクトに採択されて研究開発を行っています。
研究インフラの整備としては、2019年には四日市事業所(三重県四日市市)に新研究棟とカスタマーラボ棟を開設。それまで3地区に分散している高分子、ウレタン関連の研究を四日市事業所に集約して、石油化学・ポリマー関連技術を集約することにより研究開発機能を拡充するとともに、顧客との共同開発を充実させるためのカスタマーラボ機能を強化しました。また2020年には南陽地区南陽事業所(山口県周南市)に新研究本館を開設。研究本館内には、無機材料研究所、有機材料研究所が集約され、異分野の研究者が同じフロアに集まり、知的交流が活発となる工夫が図られています。また東京研究センター(神奈川県綾瀬市)に新研究棟の新設および大型研究棟の改修整備を行う予定です。このように新研究棟ではそれぞれの研究内容を共有し、技術の融合領域での連携を進めるとともに、オープンイノベーションを推進することで、新たな価値を創造していきます。
CHAPTER 03
研究風土
受け継がれる自由闊達で
チャレンジフルな風土。
私は1988年に東ソーに入社しました。最初は四日市の樹脂研究所(当時)に配属され、エンジニアリングプラスチックの研究に従事しました。もちろん現在と比較して研究インフラや設備は大きく変わりましたが、時代を経ても変わらず受け継がれているのが自由闊達で社員のチャレンジを尊ぶ企業風土です。
東ソーには昔から研究員の主体的な研究を後押しするための「テーマ提案制度」があり、実は私も入社2年目に、光ディスクメディアの材料となる透明プラスチックの開発をテーマに掲げ、採用された経験があります。最初は3名のチームで研究を進め、材料の設計から量産、マーケティングまで経験させてもらいました。提案したテーマは最終的に製品化には至りませんでしたが、そこで蓄積した知見や経験は、その後の技術開発で非常に大きな役割を果たしています。また2001年にはアメリカのケント州立大学の液晶研究所に派遣され、液晶技術を学ぶ機会もいただきました。若手の主体的なチャレンジを後押ししてくれる企業風土は東ソーの大きな特色です。
もうひとつの特色は、力を合わせて課題を解決しようという協力の文化です。東ソーには合成や物性、評価、製造、マーケティング、営業部門などさまざまな分野の技術者、専門家がいますが、それぞれが知恵と力を出し合い、大きな力となって問題を解決していきます。それこそが東ソーの、強みであると私は思っています。
現在東ソーでは電子実験ノートの導入による研究者・研究所間の情報共有体制の強化や、MI(マテリアルズ・インフォマティクス※)の活用を進め、研究開発の効率化を図っています。これにより一部のテーマでは設計段階にかかる時間は10分の1ほどに短縮化され、個人に依存する部分が多い技術を広く共有できるようになってきています。こうした研究環境は、部門を超えてみんなで問題を解決する東ソーの強みを、さらに高めていくはずです。
(※)マテリアルズ・インフォマティクス
材料情報科学。材料に関するさまざまなデータを統合・整理し、データマイニングの手法によって必要な知識を取り出す研究開発手法。従来の実験手法に比べ、新規材料探索などを効率よく行うことが可能となる。
CHAPTER 04
求められる研究者像
主体的に未来を描き、
そこに向かってチャレンジする。
これから化学業界への就職を志す皆さんには、学生の間に「これだけは誰にも負けない」という領域をしっかりつくっていただきたい。もちろん企業に入れば学生時代のテーマだけではなかなか製品化に結びつかないため、幅広い視野と柔軟性が必要になります。しかし学生時代に主体的に取り組んだ経験とそこで得た自信は、その後の活動の礎になるはずです。
東ソーでは2021年度、人材育成の基本方針を変更しました。新方針は「環境変化に対応するために自身のありたい姿を描き、その実現に向けて、学び・やり抜く意欲を持ち続けられる“自律型人材”を育成する」ことです。この「自律型人材」とは、「組織内外に限らず、いかなる環境下であっても、自ら仕事や役割を創り・周りを巻き込んで結果を出す人材」であると定義しています。自らが主体的に未来を描き、そこに向かってチャレンジすることが重要です。
冒頭に申し上げたように、現在はあらゆる分野で革新が進んでおり、研究者・技術者にとってチャンスに満ちた時代です。また化学業界が果たすべき使命・役割も増大しています。やはり研究者・技術者にとっての醍醐味とは、自分が提案した、あるいは関わったテーマが製品化され、社会課題の解決に貢献することでしょう。それを成し遂げるために、さまざまな人々と力を合わせてチャレンジすることが、最終的には仕事の達成感につながります。そのための環境を整備し、用意することが私の役割だと考えています。ぜひチャレンジしてください。