奨学生の声 2021年度
「10年後の私」
匿名
14歳、まだ中学生だった私自身のことを考えると10年という期間で人は大きく変わるのだと実感します。人前で発表するのが苦手で、英語のスピーチの時、緊張で震えていた私が、今では大勢の人の前で研究発表できるようになりました。日々のほとんどを野球の練習に費やし、プロ野球選手を目指していた私が、今では朝から晩まで太陽電池の研究に明け暮れています。
今回、「10年後の私」という文章を書くにあたって、今後10年間の人生計画について考えました。これまでの10年間と同様に、この通りに進むことはなく、進路変更を幾度となく繰り返すと思いますが、現時点で、「10年後はこのように変わっていたい」「10年後も変わらずこのような人間でありたいJという私の人生の進路をここに記したいと思います。
まず、変えたくないことは様々なことに興味をもって挑戦する姿勢です。私は、学生生活で色んなことに挑戦してきました。特に、研究室に所属してからは、自分に与えられた主テーマだけでなく、そこから派生する新たなテーマや全く異なる分野のテーマについても取り組んできました。新しいことへの挑戦は、最初は手探りであったり、結果が出せなかったりするため、体力や気力が削られることも多くあります。しかし、その中で得た幅広い経験や知識が困難に直面した際や、新しい展開を考える際に活きることを実感してきました。これから、社会に出て働くうえでも、様々な分野や職種に興味をもち、積極的に挑戦を続けることで、幅広い視野や技術を身につけていきたいと思います。
また、10年後も変わらず化学が好きでありたいと思います。中学生の理科の授業で、「この世界のすべてのものは原子という小さな粒子から構成されるJと習って以来、私は化学という分野に魅せられ、大学に入ってからも学んできました。6年間化学について学ぶ中で、新しいことを知るたびに、その何倍もの疑問が生まれ、化学という分野の途方もない奥深さに無力感を味わうこともありました。しかし、新たな知識が自身の知識や経験とつながる瞬間や企業との共同研究で商品の開発に携わる経験はとても楽しく、今まで以上に化学が好きになりました。今後社会に出て働くうえで、さらなる化学の知識や技術を得る必要があると思います。その中で、さらに化学の奥深さや重要性を知り、化学の力で人々の生活に豊かにすることで、より化学を好きになりたいと思います。
一方、10年後には今よりも英語を使いこなせるようになっていたいと思います。近年、技術の発展に伴い様々な分野でグローバル化というワードを耳にする機会が増えています。化学業界においても、海外の顧客との取引や製造拠点の海外移転などの加速が予想される中で、活躍できるように成長したいと考えています。そのためには、第一に英語を使いこなす必要があります。3年間の研究生活において、英語で論文を読んだり書いたりする経験は積んできました。しかし、英語を聞いたり、話したりする機会はほとんどなく、英語でのコミュニケーションは苦手なままです。今後もし、英語でのコミュニケーションが必要になった時、円滑に対応するためにも、英語のリスニング・スピーキングカは鍛えていきたいと思います。
また、世界情勢について興味関心をもち、詳しくなりたいと思います。これまで私は、世界のどこで、なにが起きて、どのような影響があるのかそれほど関心を持っていませんでした。昨年就職活動をするなかで、様々な世界情勢の変化が、企業の拠点の設立、撤退、製品価格の増減、新規事業の立ち上げ等に影響を与えていることを知りました。日頃から社会の情勢に目を配ることで、純粋な化学の知識だけを追い求めるのではなく、化学を経済、経営、環境などの異なる分野と複合的に捉え、最大限に活かすことができるようになりたいと思います。
以上が、現時点の私が考える「10年後の私」です。今後10年間、社会や周りの環境が大きく変化するなかで様々なことを経験し、この進路は変わるかもしれません。しかし、24歳の私がこのような考えを持っていたことを思い出し、迷った時には道標とできるよう、時々この文章を読み返したいと思います。最後になりますが、新型コロナウィルスの流行の影響で経済的な不安がある中、本奨学金により、研究および学業に打ち込むことができました。心より感謝申し上げます。