研究開発戦略

東ソーはCSVの考えのもと、これまでにない新しい価値を持つ革新的な研究開発による、SDGsを踏まえた社会課題解決型の製品創出を目指して取り組んでいます。基本方針として、前中期経営計画から「ライフサイエンス」「電子材料」「環境・エネルギー」を重点3分野と定め、積極的な投資を行っています。

また、研究開発を加速させ、事業部と研究所の連携強化を目的に、技術分野別・機能分野別の体制を構築しています。
研究部門を統括する研究本部の管理下に、既存事業の製品開発を支える事業系研究所、基礎技術や新分野を担うコーポレート系研究所を配し、シナジー効果を生み出していきます。

  • Creating Shared Value(共有価値の創造)
    社会課題の戦略的な対応が企業の長期的な成長にも寄与するという考え方。

取締役 常務執行役員 研究本部長 土井 亨
取締役 常務執行役員
研究本部長土井 亨

基本方針

  • 製品化計画の着実な達成
  • 研究開発の高度化・効率化
  • 次世代大型テーマの創出

研究開発概要

革新的な研究開発によって、社会課題解決型の製品創出へ

研究開発概要

重点3分野

  • ライフサイエンス分野

    • バイオプロセス上流工程製品
    • バイオプロセス下流工程製品
    • 新規診断・検査製品
  • 電子材料分野

    • ディスプレイ材料
    • 高速大容量通信材料
    • 半導体関連材料
  • 環境・エネルギー分野

    • CO2分離回収・有効利用技術
    • 廃プラスチックリサイクル技術
    • 次世代電池材料

ライフサイエンス分野

計測・診断装置から歯科材料まで幅広い技術で、
世界の健康に貢献

東ソーのライフサイエンスは、病気の早期発見を促す臨床検査システム、医薬品の製造・品質管理に活用される分離精製剤やその他の解析技術を通じて、世界100カ国以上の人々の健康で豊かな生活に貢献しています。
診断分野では、各種がん、糖尿病、高脂血症、心疾患、不妊治療など検査項目は多岐にわたり、大学病院や総合病院、がんセンター、クリニックなどで使用されています。優れた検査処理能力と自動化技術により、性能面・操作面ともに世界トップクラスの製品を各国に展開しています。

創薬・再生医療の発展に貢献

均一な細胞塊を大量かつ簡便に形成

均一な細胞塊を大量かつ簡便に形成

創薬・再生医療の発展に貢献

均一な細胞塊を大量かつ簡便に形成

生命の最小単位となる細胞を体外で増やす細胞培養は、生物学の研究に欠かせないもの。創薬や再生医療の発展にも密接に関わってきました。当社が開発した「2.5次元 培養器材®(開発品)」は細胞塊を均一、大量、簡便に形成でき、iPS細胞やがん細胞など、さまざまな細胞に適用します。そのため、ヒトiPS細胞の細胞塊から神経や心筋への分化誘導や、がん細胞の細胞塊を用いた抗がん剤薬効試験に応用可能。創薬・再生医療への貢献が期待されています。

  • 培養条件の制御によって目的の細胞に変化させること

バイオ医薬品製造工程に貢献

高品質なカラム充填剤を安定供給

高品質なカラム充填剤を安定供給

バイオ医薬品製造工程に貢献

高品質なカラム充填剤を安定供給

バイオ医薬品などの研究開発・製造時に不可欠な分離精製剤「TOYOPEARL®」。クロマトグラフィー用分離精製剤として医薬品や食品、環境といった業界で試料の前処理や精製時に使用されています。バイオ医薬品の世界市場が拡大を続ける中、当社の各種製品は分析から精製まで一貫した安定供給が可能なため、注目を集めています。今後もニーズに応え、高品質・安定供給を提供し続けます。

新型コロナウイルス、新規卵巣がんマーカーの測定に貢献

新たな診断・検査試薬の発売

新たな診断・検査試薬の発売

新型コロナウイルス、新規卵巣がんマーカーの測定に貢献

新たな診断・検査試薬の発売

当社の診断装置や試薬の開発は、各種がんや心疾患、結核など、さまざまな病気の診断・検査に活用されています。近年では、迅速・簡便・小型を特長とする当社の遺伝子検査システムを利用した新型コロナウイルスの検査試薬を発売し、検査作業の効率化、 医療・検査従事者の作業負担軽減を実現しました。また免疫測定装置の専用試薬として、新規卵巣がんマーカーTFPI2の測定試薬を開発。従来品と比べて、抗がん剤が効きにくい卵巣明細胞がんに対し、特異性が高く、最適な診断や治療を提供するための一助として医療に貢献します。

電子材料分野

培われた優位性、強みを生かして社会・生活の課題解決に貢献

私たちの生活に豊かさをもたらす電子材料は、家電に限らず、電車・自動車などの運行やインターネットなど、社会インフラを支えています。
それらに不可欠な半導体製造工程において、当社も製品を通じて貢献しています。
今後も成長が期待されるディスプレイ・高速大容量通信・半導体関連などの電子材料の領域では、グループ会社や産学官連携によって新たな先端技術・評価技術を獲得し、新規電子材料の創出を目指します。

ウェアラブルセンサなど柔軟な製品にも応用可能に

プリント技術で薄くて軽いディスプレイを実現

プリント技術で薄くて軽いディスプレイを実現

ウェアラブルセンサなど柔軟な製品にも応用可能に

プリント技術で
薄くて軽いディスプレイを実現

折りたたみ式や曲面ディスプレイがトレンドになりつつある中、次世代ディスプレイ向けに、当社は印刷可能な有機半導体を開発。薄くて軽くて大面積のディスプレイが作製可能になる上、“身に着けられる”生体センサとして需要が高まっているウェアラブル・ヘルスケア分野への応用が期待されています。汗中に含まれるイオンを検出するためのシステムも構築し、ウェアラブル汗センサが実用化されれば、スポーツや医療現場のみならず、夏季の工事現場で働く人たちの体調管理、労災発生抑制への貢献につながります。

低コスト×省エネ化で社会に貢献

スパッタリング法で窒化ガリウムを成膜

スパッタリング法で窒化ガリウムを成膜

低コスト×省エネ化で社会に貢献

スパッタリング法で窒化ガリウムを
成膜

大きな電流を流せるパワー半導体の普及が高まる今、当社は次世代パワー半導体材料として注目される「窒化ガリウム(GaN)スパッタリングターゲット」を開発。培ったターゲット製造技術を利用することで、高品質でありながら低コストを実現。エネルギー効率も優れ、省エネ効果を高めます。消費電力の抑制はCO2の大幅削減にもつながり、半導体市場拡大のキーアイテムとして注目されています。

半導体市場の発展に貢献

高品質な石英ガラスを安定供給

高品質な石英ガラスを安定供給

半導体市場の発展に貢献

高品質な石英ガラスを安定供給

高純度と耐熱性が必要とされる半導体の製造工程において、製造装置の素材として欠かせないのが「石英ガラス」。石英ガラスは高純度、高耐熱性、高光透過率を特長に持つ素材で、中でも当社の溶融石英は量産時もその純度を保つことが可能。品質優位性と供給安定性が評価され、各種装置への採用が進んでいます。さらに、レーザー核融合の分野で使われるSグレードは、溶融石英と合成石英の中間的な特性を持つ当社独自の製品で、国内外に展開しています。

環境・エネルギー分野

持続可能な地球環境を守る
脱炭素社会の実現に向けた独自製品・技術の創出

環境負荷の低減や脱炭素が注目を集める中、CO2排出量削減に貢献する製品や、環境対応型プラスチック用改質剤などの高機能材料を製造・供給しています。特に、脱炭素・循環型社会の実現に向けた大きな動きの中で、当社も独自製品・技術の創出に取り組んでいます。
CO2分離回収や有効利用、廃プラスチックリサイクル、次世代電池材料など、産学官連携やオープンイノベーションを通じて、環境・エネルギーに資する技術革新を生み出していきます。

カーボンニュートラル実現に貢献

NOx耐性に優れたCO2回収用アミンを開発

NOx耐性に優れたCO2回収用アミンを開発

カーボンニュートラル実現に貢献

NOx耐性に優れたCO2回収用アミンを
開発

CO2排出量規制が強まる中、当社は石炭や天然ガスなどの化石燃料燃焼排ガスから CO2を分離・回収可能な高機能アミンを開発。この新アミンは窒素酸化物(NOx)によ る劣化を受けにくいため、CO2回収を高効率に。CO2回収用アミンの長期安定使用、回収エネルギーの低減に加え、長寿命化により運用コストの低減などのメリットも。回収したCO2においても、ポリウレタンやポリカーボネートの原料として有効利用するなど 技術開発を進めており、カーボンニュートラル社会への貢献を目指します。

リサイクルの課題解決に貢献

環境対応型プラスチック用改質剤を開発

環境対応型プラスチック用改質剤を開発

リサイクルの課題解決に貢献

環境対応型プラスチック用改質剤を
開発

環境問題への注目により、プラスチック製品のリサイクルやバイオマス樹脂の利用が 急速に進む中、多層フィルムなど複合製品のリサイクルの難しさが課題でした。 そこで当社が開発したのが、異種プラスチックの相溶性をコントロールできる改質剤 「メルセン®-S」。これによりリサイクル可能なフィルム用途の幅は広がり、石油由来の CO2削減を期待できます。また、複合製品のリサイクルの実現は、廃棄物量の削減につながります。

電気自動車の普及によるCO2排出低減に貢献

全固体電池向け材料を共同研究

全固体電池向け材料を共同研究

電気自動車の普及によるCO2排出低減に貢献

全固体電池向け材料を共同研究

エネルギー問題を考える上で、電池は極めて重要な役割を担います。中でも次世代電池の大本命として注目されているのが「全固体電池」。従来のリチウムイオン電池に対して高いエネルギー密度、充電時間の大幅短縮、電池の低コスト化が期待され、電気自動車の競争力向上が見込めます。当社でも培った電池材料技術の知見をベースに、材料革新が期待される全固体電池材料の開発に取り組み、異なる専門性を持つ研究所間で横断的に開発を進める「バッテリーオープンラボ」を社内に開設。全固体電池の世界最先端機関である東京工業大学との共同研究によって開発を推進しています。

研究開発体制

東ソーでは、全研究部門を統括する研究本部の下に、3つの機能別研究センター(先端融合研究センター、石化・高分子研究センター、機能材料研究センター)および6研究所(ライフサイエンス研究所、先端材料研究所、高分子材料研究所、ウレタン研究所、有機材料研究所、無機材料研究所)を設けています。
研究部門間の連携を強化し、社会課題や成長分野、研究DXなどに研究部門全体で取り組むことで企業の持続的な成長と企業価値の向上を目指し、持続可能で豊かな社会の実現に向けて貢献していきます。

研究開発体制