基本的な考え方
東ソーは、グループで働くすべての人を企業価値創出の源泉と考えています。従業員個人の能力、経験、価値観などを尊重し、多様なバックグラウンドを最大限に活かすことで、新たな価値創出につなげることを目指しています。
そして、企業価値を持続的に向上していくためには、従業員の自律的な成長を促し、仕事と生活を両立しながら持てる能力を十分に発揮できる風通しの良い職場環境を醸成することが重要です。さまざまな制度や施策を通じて、多様な「働きやすさ」の整備と多様な「働きがい」の創出を実現していきます。
体制・責任者
人事部長を責任者として、本社人事部と事業所人事部門が密に連絡を取りながら、東ソーの人事・労務施策、従業員の採用・育成、福利厚生などの方針の策定・実行を行っています。
重要な人事施策、組織の新設・改編や役職の任免の実施などについては、経営会議に付議し、協議と決裁を行っています。特に重要な事案については、取締役会に付議し、承認を得ています。また、活動に関する事項は、定期的に取締役会に報告を行い、必要に応じて指示を受けています。
人事制度
東ソーは、「創造的組織」「挑戦的風土」「公平な処遇」を人事制度の基本理念とし、「当事者意識に燃えて行動する人」が評価される人事制度の確立を目指しています。
人事制度基本理念のもと、従業員の能力開発と人材育成を推し進めることを目的に、職分制度・育成面談制度・人事考課制度・賃金制度の4つの個別制度を有機的につなげています。
人事制度基本理念
持てる力を最大限に発揮できる「創造的組織」
加点主義を徹底した評価による「挑戦的風土」
努力したものが本当に報われる「公平な処遇」
人事制度体系図
従業員への評価とフィードバック
職分制度
東ソーでは、従業員の職務遂行能力を「職階」「職掌」「職分等級」「職能コース」の4つの要素で構成し、それぞれの従業員に期待される役割や目標を明確にしています。これにより、従業員の能力開発や育成の目標を定める指針としています。
なお、「職能コース」には、広範囲のキャリア伸展を志向する「総合職」と熟練エキスパートとして活躍する「一般職」があり、総合職としてふさわしい職務遂行能力を有すると評価された一般職従業員には、総合職に転換する「職能コース転換」を行っています。
育成面談制度
すべての従業員が自身のキャリアを主体的に考えられるよう、1年間の業務目標、短期・長期的なキャリアプラン、取得したいスキルなどを設定し、上司との育成面談を期中と期末の年2回行うことを制度化しています。この面談を通じて、業務目標の進捗状況や達成度、短期・長期にわたる職務遂行能力、適性、キャリア開発について上司と従業員が相互に確認し合い、能力や意欲の向上を図るとともに、個別の職務開発を促進しています。
人事考課制度
上司は育成面談の結果を基に年2回の人事考課を行っており、その評価の最大の目的を「人材の育成」に置いています。育成面談の場では、上司が従業員の強みや弱みをフィードバックし、業務目標の達成に向けた指導やアドバイスを行うことで、効果的な能力開発を実現しています。
賃金制度
東ソーの賃金制度は、「職分等級」「職能コース」別の設計で、男女で同一の制度を適用しており、制度内容を従業員に開示しています。賞与(ボーナス)は、支給額の決定プロセスの透明化および従業員の納得性を高めることを目的に業績連動方式を導入しています。
人材への投資を重視しており、適切な賃金を支給することが、優秀な人材の確保、従業員のモチベーションの向上および活性化につながると考えています。その考え方を踏まえて、2024年度は11年連続となるベースアップを実施しました。賃金制度のあり方をはじめとして、給与のベースアップ、各種手当の見直し、賞与の支給額などについては、労働組合と毎年定期的に協議を行っています。
また、世代交代が急速に進展し、経験豊かな人材が持つ多様な知恵や知識を必要とする中で、60歳の定年後も持てる力を十分に発揮し、モチベーションを持って活躍し続けてもらえるよう、再雇用制度の賃金水準についても適宜見直しを行っています。
2023年度従業員の男女の賃金比※1(東ソー籍)
区分 | 男女の賃金比※2(%) |
---|---|
正社員 | 73.7 |
有期雇用者 | 66.4 |
全体 | 72.6 |
- 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規程に基づき算出。
- 女性の平均年収/男性の平均年収
給与体系は男女で同一の体系を適用しており、差は職階、職掌、職分等級、職能コースによる。
「自律型人材」の育成
東ソーは、「教育は経営が期待する人材を育成し、かつその過程において従業員の自己実現に寄与するものである」との教育理念のもと、豊かな人格と資質の向上、思考能力の開発、安全・安定運転に関する知識・技能の習得を目的に、教育・研修制度を体系的に整えています。
持続的な企業価値の向上を実現し、ステークホルダーから信頼される企業であり続けるためには、「社会変化に対応し、自ら考え行動できる『自律型人材』を育成すること」が重要であると考えています。2021年度に新たに策定した人材育成の基本方針をもとに、一人ひとりが高い付加価値を生み出し、東ソーの競争力の源泉につなげていきます。
人材育成の基本方針
「自律型人材」とは、組織内外に限らず、いかなる環境下であっても、自ら仕事や役割を創り、周りを巻き込んで結果を出す人材、と定義しています。自らのありたい姿を描き、学び続けることを重視して、「描く」「問う」「学ぶ」を繰り返し、変化の激しい時代に対して柔軟に対応できる人材の育成を目指しています。
人材育成の基本方針
人材育成の基本方針に基づき、2021年度に教育体系をスキル付与に重点をおいた受動的な研修から、キャリア教育をベースにした能動的・持続的に学ぶ体系へと再構築しました。「基本教育(制度・法律等)」「自己啓発によるスキルの習得」「業務経験・機会による学び」「グローバル人材育成」の4つの項目を持続的に学ぶことで「自律型人材」を目指します。そのために必要な5つの要素を明確にし、それぞれの要素を段階的に身につけていく教育プログラムとしています。
社内教育体系
東ソーの「自律型人材」に必要な5つの要素
必要な要素 | 意味合い |
---|---|
巻き込み、動かす力 | 「巻き込まれる」のではなく、自分とは異なる多様な価値観の人を認め、自ら働きかけて動かしていく |
自ら変わり続ける力 | 「既存の枠にはまる」のではなく、変えられるものに目を向けて変革の戦略を立て、前向きに行動を変えていく |
やりきる覚悟 | 困難にぶつかっても代替案を探し出し、未来を信じて諦めずに行動し続けることによって完遂する |
描き、創る力 | 「目の前の課題解決に向き合う」だけではなく、目的やあるべき状態を描いて課題を設定し解決していく |
探求心 | 何事にも広く興味を持ち、さまざまな物事をかけ合わせて新しいものを構築していく |
キャリア教育
VUCA時代※の今、環境変化に対応するためには、自身のありたい姿を描き、その実現に向けて学び・やり抜く意欲を持ち続けることが必要です。仕事に必要な能力開発を自分自身で考え、実行する従業員主体型のキャリア形成を進めています。
階層別研修では、従業員の自主性や主体性を引き出すことを狙いとしたキャリア教育を導入しています。これまでの自身のキャリアの棚卸と将来ありたい姿を描く機会を設けた後、全受講者に対しキャリアコンサルタントによるキャリアカウンセリング受講の機会を提供しています。そこで、キャリアの目標を明確化し、仕事の目標意識を高め、仕事への満足度向上や個人の成長を促しています。2024年度には、総合職従業員のキャリアカウンセリング実施割合70%以上を目指し、取り組んでいます。
さらに、2022年度にキャリアサポートグループを新設し、全従業員を対象に国家資格キャリアコンサルタントの有資格者とのキャリア相談ができる環境を整えました。働き方や適性、置かれた状況などさまざまな人がいる中で、その人がその人らしく活躍できるように、理想のキャリアやライフスタイルを描くことをサポートしています。
また、幹部職は、自身の役割認識とキャリアについて考える必要があるだけでなく、部下や後輩のキャリア支援をすることも重要な役割となります。そのため、幹部職研修では、“部下・後輩のキャリア支援”という観点も含めた研修を行っています。
- Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったもの。
教育体系図
- 若手キャリア研修以降の階層別研修後にはキャリアカウンセリングを受講可能とする。
2023年度総合職階層別研修実績(東ソー籍)
研修名 | 対象者 | 主な研修内容 | 1人あたりの 研修時間 (時間) | 受講者 (人) |
---|---|---|---|---|
新入社員 研修 | 新入社員 | 仕事のスタンスを固める
| 150 | 99 (男性:75 女性:24) |
フォローアップ 研修 | 入社 2年目 | グループ討議を通じて、自らの振り返り・啓発の機会とする
| 11.25 | 84 (男性:60女性:24) |
若手キャリア 研修 | 入社 3~4年目 | キャリアの方向性を明確化する
| 7.5 | 103 (男性:87 女性:16) |
中堅キャリア 研修 | 入社 7年目相当 | 中長期のキャリアビジョンを策定する
| 15 | 70 (男性:61 女性:9) |
上級指導職 研修 | 上級指導職 昇格者 | キャリアの棚卸および役割理解
| 11.25 | 44 (男性:39 女性:5) |
初任幹部職 研修 | 新任幹部職 昇格者 | キャリアの棚卸および初任幹部職として期待される役割の理解
| 22.5 | 65 (男性:64 女性:1) |
上級幹部職 研修 | 上級幹部職 昇格者 | 上級幹部職としての自らの役割と責任の再確認
| 15 | 30 (男性:29 女性:1) |
総合職階層別研修の教育研修投資額(東ソー単体)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
投資額 | 38.1 | 55.7 | 58.0 |
自己啓発によるスキルの習得支援
自律的な学びの支援
東ソーでは、業務上必要な基礎知識および一般教養・スキルの修得を目的として通信教育制度を整備し、従業員の自律的な学びを支援しています。自身の業務に関係なく受講することができ、修了者には受講料の50~80%相当を補助しています。
育児休業中に受講した場合は全額会社負担としており、休業中の自己啓発や職場復帰前の準備期間に活用されています。
通信教育の受講者数(東ソー籍)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
受講者 | 374 | 267 | 249 |
資格・技能検定の取得奨励
従業員が各種資格および免許を取得するための受験および受講を支援しています。
東ソーが指定する資格・免許を取得した従業員は、難易度によって5つの区分に分けた報奨金を給付しています。
製造・設備管理部門に所属する一般職には、技術力の底上げを目的として、各職分への昇格に必要な資格の取得を設定しています。
資格報奨金の給付件数(東ソー籍)
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | |
---|---|---|---|
給付件数 | 445 | 739 | 722 |
グローバル人材育成
東ソーグループの海外売上比率は50%を超え、事業・職種によらず、今後はより一層海外と関わる機会の増加が予想されます。そこで、2022年度にグローバル人材を「仕事を進める上で語学をツールとして活用し、東ソーの事業を海外にも拡げられる人材」と定義を明確にし、個人の語学レベルに合わせて段階的にレベルアップできる育成プログラムへと改めました。今後は、従業員の語学力の底上げを図るとともに、海外トレーニー研修を通じて現地の商慣習を学び取るプログラムも拡充していきます。
2023年度には、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け中断していた海外留学を、従来通りのプログラム内容・派遣者数で再開させました。語学学校やホームステイ先での生活は、語学力の向上だけでなく、多様な価値観を持つ人との関わり方を肌で知る貴重な機会になります。
従業員のグローバルな知見を深め、さらなるグローバルビジネス展開力を習得できるプログラムへと発展させることで、グローバル人材の育成を強化していきます。
新卒・中途採用
東ソーの持続的な成長を実現するために、多様な価値観を持ちグローバルに活躍できる適正人員の確保に努めています。
新卒採用では、求める人物像を「探究者」×「開拓者」とし、物事に対して深く知ることに労力を惜しまず、多様な仲間と課題解決に向けて取り組むことができる人材の確保を目指しています。そのため、採用ホームページやパンフレットを通じて、東ソーの進むべき重点分野や技術動向、人的魅力に関して情報発信を行っています。また、業界研究セミナーや1day仕事体験などにより早期段階で学生と接点を持ち、企業理念や経営方針だけでなく、先輩従業員を通して東ソーの社風をアピールしています。
他にも、DXや環境関連技術の高い専門性を持った人材の採用を進めるために、MIセンターおよびIT統括部によるDX推進の取り組みや、CO₂回収および原料化設備の新設、バイオマス発電所の新設などの取り組みを、採用セミナーやインターンシップで紹介し、志望度醸成に努めています。2023年度は、総合職99人、一般職86人を採用しました。
中途採用では、研究・技術開発の重点分野を中心に、専門知識と経験を備えた即戦力人材の確保を目指しています。
従業員の適正配置への取り組み
組織全体の活性化を図るためには、従業員の適性や希望に合った配置を行う必要があります。そこで、適正配置に必要な従業員の具体的な職務経歴や保有知識などの情報を一元管理するタレントマネジメントシステムの構築を進めています。また、人事部門・従業員・所属長の間で共有することで、所属長による部下の育成にも活用していきます。
さらに、自律型人材育成の方針のもと、自らの希望の業務に手を挙げてチャレンジする機会として、社内公募制度を開始しました。これらの施策を推し進めることで、これまで以上に従業員の能力を最大限に発揮できる適正配置を実現していきます。