東ソーと山形ってどんな関係?

東ソーは、2020年4月に「東ソーアリーナ」のネーミングライツを取得しました。
山口県発祥である東ソーが「なぜ山形で?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
今回は、東ソーアリーナの紹介を切り口に、東ソーと山形の、実は深くて長~い関係を紹介します。

東ソーアリーナとは

『ひょっこりひょうたん島』の原作者である井上ひさし氏が「故郷の山形に劇場をつくりたい」という構想を描き、ラスクブームで人気を博した「シベール」の創設者・熊谷眞一氏と共に造り上げた複合文化施設です。

なぜネーミングライツを取得?

2008年、シベール創業社長・熊谷氏の援助のもと設立されたものの、2019年にはシベールが経営破綻すると資金不足となり、存続が危ぶまれる事態に…。そこで新たなスポンサーとして名乗り出たのが当社でした。

手を挙げるきっかけは、当アリーナの経営危機に関するテレビニュースを当社関係者が見ていたこと。その頃、当社は社名の認知度向上を目指して一般広告への積極的な動きが検討されていました。山形(現在の山形駅西口)は1975年~1995年まで工場があった関係で県内にグループ会社が8社あることから、お世話になっている山形地域に貢献すべく、ネーミングライツ取得に至りました。

東ソーアリーナってこんなところ!

芸術文化の活動支援および地域文化の受発信の拠点を目指し、芝居、講演会、各種音楽コンサート、企画展示などを行っています。都市から発信される質の高い文化や地域に根ざした奥深い文化を発掘・発信していくことで地域文化の充実に貢献することを目的としています。

東ソーアリーナ(劇場)

演劇、コンサート、講演会、落語会などを行える劇場で、最大500名収容可能。
遅筆堂文庫山形館(図書館)

作家・劇作家の井上ひさし氏の蔵書約2万冊を、館内で自由に読書ができる図書館。
母と子に贈る日本の未来館(展示室)

井上ひさし氏と交流のあった作家に関する資料を紹介。『ひょっこりひょうたん島』の人形なども展示。

山形で事業を行う東ソーグループ

Focus.1 東ソー・クォーツ株式会社

石英ガラスのパイオニアとして 高品質な石英ガラス製品を世界へ

東ソー・クォーツでは、非常に純度の高い石英ガラスを用い、石英ガラス加工品を製造しています。

「日本石英硝子」として1936年に創立。創設者が鐵興社(1975年に現東ソーと合併)と同じ佐野隆一氏で、フェロシリコン製造中に原料の珪石がガラス状になることに着目し、日本初の透明石英ガラスを試作したことが設立のきっかけです。そのため、工場は鐵興社の山形工場内に建設されました。1975年の東ソーと鐵興社の合併を経て、1981年に東ソーが筆頭株主となり、現在は東ソー100%子会社です。

ちょこっと豆知識☝「石英ガラスってなに?」

ガラス本来の主成分は二酸化ケイ素ですが、一般的なガラスには、加工しやすいよう不純物を添加している、あるいは不純物が多い原料を使用している場合があります。一方で、石英ガラスは二酸化ケイ素の含有率が99.99%と極めて高純度で、透過性、耐熱性、耐薬性などの特長を持つ優れたガラスです。

主要製品

事業 製品 用途
半導体用製品 ・サーマルプロセス用製品
・エッチングプロセス用製品
半導体、太陽電池、LED
液晶・有機ELマスク基板 ・アズカット基板/研磨基板 スマーフォン、PC、液晶テレビ
精密加工製品 ・分析・診断装置部品(光学セル、マイクロ流体チップ)
・製造・検査装置部品(ノズル、フィルター)
・研磨製品(研磨基板、ウェハー)
・その他(伝送ライト)
血液診断機器

Focus.2 東ソー・スペシャリティマテリアル株式会社

高品質なターゲットを山形から世界へ

東ソー・スペシャリティマテリアルは、粉末を焼き固めて塊状にする独自の焼成技術で、高純度かつ高品質なスパッタリングターゲットなどを製造しています。

事業開始のきっかけは、1956年に鐵興社の山形工場で電解金属クロムの製造が開始されたこと。現在の主力製品であるスパッタリングターゲットは1983年に製造開始されました。

山形駅前の開発計画により東ソーは移転を決めると、電解金属クロムは1995年に生産停止、スパッタリングターゲットは東ソー・スペシャリティマテリアルに分社化することで、事業を継続することになりました。新工場は1997年、山形市蔵王産業団地に開設され、今に至ります。

ちょこっと豆知識☝
「スパッタリングターゲットってなに?」

半導体、太陽電池などの製造工程には「薄膜を作る」成膜工程があります。成膜とは、基板となる物質の表面に薄膜を付着させることで、ガラス、樹脂、金属の基板に通電、光をコントロール、発熱するなどの機能を持たせることができ、例えば半導体なら、成膜すると必要な絶縁体と導体の機能を付与することができます。その成膜の手法として「スパッタリング法」が多く使われます。

「スパッタリング法ってなに?」

「スパッタ」とは、パチパチ弾け飛ぶ音を出している状態(飛沫作用)のこと。例えば、水たまりに石を投げ入れると、水が飛び散ります。同様の原理で、真空の中でターゲットにアルゴンイオンを衝突させて放出したものを基板に付着させて薄膜を形成する方法です。

主要製品

製品 特長
クロムターゲット ・原料にクロムの粉末を使用し、放電安定性に優れる
・超高純度のグレードは半導体に、通常グレードは液晶や電子部品、配線材料などに使用
ITOターゲット ・原料に酸化インジウムの粉末を使用し、高純度で微細かつ高密度
・液晶製品、太陽電池のほか、不純物を嫌う製品にも利用可能
その他ターゲット ・ニーズに応じ、さまざまな金属/合金/酸化物ターゲットを製造
・平面型のものよりも材料の利用効率が高く、また長期間使える円筒型のターゲットも製造
Cr-Siターゲット ・温度に対して抵抗値が変わらない性質をもつ
・家電のIoT化や自動車の自動運転化などへの搭載が期待される開発品
GaNターゲット ・成膜手法に、スパッタリング法を採用
・原料利用効率の向上とコスト減を実現し、省エネルギー化が期待される開発品
セラミックス製造 ・富山の東ソー・セラミックス株式会社から技術を導入
・精度の高い精密セラミックス成形を受託

Focus.3 東北東ソー化学株式会社

山形県酒田市に本社を構える東北東ソー化学。塩の電気分解(電解)を起点にさまざまな製品を生産しています。東ソー(当時は東洋曹達工業)の酒田工場と石巻工場が1983年に分離独立してできた会社です。

現在は、産業と暮らしを支えるクロル・アルカリ事業(液体苛性・塩酸など)をメインとし、秋田県能代市においては微粉炭酸カルシウムを製造・販売し、東北地方を中心に事業を展開しています。

主要製品

分野 製品 用途
クロル・アルカリ製品 ・液体苛性ソーダ
・塩酸
・紙、パルプ、超純水製造分野など
・食品、香料、医薬品、超純水製造分野、各種化学品などの製造
石灰製品 微粉炭酸カルシウム 公害防止のための排煙脱硫用のほか、農業、飼料、土木、ゴム、紙など

\もっとあります!/ 山形県内のグループ会社

Focus.4 東北電機鉄工株式会社

機械・電気の両設備に対応できる柔軟な総合エンジニアリング企業

東ソーグループの総合エンジニアリング会社として、1945年の設立以来、長年にわたり高い技術と品質で設計から施工、そしてアフターメンテナンスまで、ワンストップなサービスを提供しています。東北東ソー化学に隣接しており、同社の設備管理なども請け負っています。

Focus.5 東邦運輸株式会社

酒田市を拠点に安全輸送・高品質の物流サービスを提供

1949年の設立以来、化学品ローリー輸送、ガス製品輸送、一般貨物輸送、ダンプ輸送といった物流事業をはじめ、倉庫業、構内作業、自動車整備事業と多岐にわたった事業を展開しています。東北東ソー化学にほど近く、同社のローリー輸送なども請け負っています。

山形工場跡地は今

東ソーがあった痕跡が…!

山形工場があった跡地は現在「三の丸稲荷東公園」となっていますが、その東側入口に、公園の名称を表す「園銘碑」を兼ねて、東ソーが寄贈した石碑があります。

地元蔵王山の自然岩でつくられた高さ2m、重さ15トンもある石碑の裏には、山形工場の由来、整備事業の意義、そして多くの人に愛されるよう祈りを込めた文面が刻まれています。山形駅から徒歩2~3分程度ですので、山形を訪問した際はぜひ立ち寄ってみてください。

  • 本記事の内容は、掲載当時のものとなります。

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