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主要異常ヘモグロビンの検知能力向上を目指して
世界の糖尿病人口は2021年時点で約5億人と推定され、またその増加率も加速傾向にあり、抑制と対策は世界的な重要課題です。糖尿病疾患の有無や進行状態を示す目安に、グリコヘモグロビン(HbA1c)があります。グリコヘモグロビンは血液中のヘモグロビンの中で糖化された割合を示す値で、2010年代には糖尿病の診断基準に取り入れられました。今では健康診断や糖尿病の診断・治療で広く使用されています。東ソーは、1983年に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法※によるグリコヘモグロビン分析装置を上市して以来、市場ニーズに応えたモデルチェンジを繰り返し、長年、国内外で高いシェアを有しています。
ヘモグロビンの中には、遺伝的に一部変異が生じる「異常ヘモグロビン」があり、この存在により高速液体クロマトグラフィー法で正しい結果が得られないことが多く、課題となっていました。異常ヘモグロビンは現在1,800種以上存在し、中でも4種が主要異常ヘモグロビンとされ、日本では3,000人に1人の割合で存在すると言われています。海外との比較では少ないとされてきましたが、近年では訪日・在留外国人の増加に伴い、国内でも主要異常ヘモグロビン対応へのニーズが高まってきました。そこで、東ソーは主要異常ヘモグロビンの検知能力の向上を目指し、新製品開発に着手しました。
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液体に溶解する物質を分離定量する分析方法
新装置「HLC-723GR01」
HLC-723GR01は、短時間測定と主要異常ヘモグロビン対応の詳細分析の両立を可能としたシステムです。
2つの測定モード
- Standard Shortモード
- 1検体あたり30秒で、主要異常ヘモグロビンを検知することが可能です。
ただし主要異常ヘモグロビンを十分に分離することはできないため、HbA1c 測定値を報告しません。 - Standard Longモード
- 1検体あたり50秒で主要異常ヘモグロビンを検知・分離することが可能です。
主要異常ヘモグロビンを分離することができるため、正確なHbA1c測定値を報告できます。
測定モード | Short | Long |
---|---|---|
処理速度 | 30秒 | 50秒 |
主要異常ヘモグロビン検知 | 〇 | 〇 |
HbA1c報告 | × | 〇 |
モード切り替え
同装置はカラムや溶離液を交換せずに、測定モードを切り替えることが可能です。そのため、通常は測定時間の短いStandard Shortモードで運用し、主要異常ヘモグロビンを検知した検体のみStandard Longモードで測定する運用が可能です。検査室での再検率や報告不可率を減らすことで、トータルの測定時間や工数の削減に寄与できると考えています。
HLC-723GR01は、2022年9月の国内上市以降、多くの施設で導入されており、現在は海外上市に向けて開発ならびに申請を進め、2025年5月には欧州上市を予定しています。欧州のお客様によるHLC-723GR01の先行評価では、性能面はもちろんのこと、一新したユーザーインターフェイスなど使い勝手についても好評をいただきました。
同装置が世界中でより広く使用されることで、早期診断や治療による糖尿病合併症の低減に貢献し、患者の生活の質向上や医療費の削減につながることを期待しています。

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